推し活をしている人には、さまざまな感情が渦巻いている。今回は、現代の推し活によって生じる複雑な人間の心理について、本学経営学部総合経営学科の井上淳子教授にお話を伺った。

井上教授は「推し活とは人の応援をしながら、自分のことも応援する行為」だと語る。これに加え、推している対象がより活躍するなど応援していることに対する報酬やリターンがあることが幸福感につながるという。全般的に幸福度へ影響を及ぼすという推し活だが、熱心に取り組む人たちに生じる場合がある心情として、井上教授は「心理的所有感」をあげている。これは、実際には自分で所有できないものに対して、あたかも自分のもののように感じる独占欲と、それを守るために何か行動を起こすことを指す。この心理的所有感は過度なものになると危険につながる可能性があるが、適度であれば推し活に対する労力が適切に高まることにつながるという。
井上教授によると、推し活では推している対象に対してだけでなく、自分と同じように推し活をしている周囲の人に対しても感情が芽生えるという特徴がある。一緒に推しを応援する喜びなどポジティブな感情が芽生える反面、競争意識やライバル意識などネガティブな感情が生じることもある。しかし、井上教授はそうした感情も推し活に必要なものであると語る。ネガティブな感情によってより推しのことについて調べ、自分自身が周囲の人よりも情報を得ているという優越感が生じるなどポジティブな感情へとつながる場合もあるという。
井上教授は、推し活にのめり込むことで金銭面での歯止めがきかない若者が増えているという実情もあり、ネガティブな方向にベクトルがいかないように調整することが重要だと語った。幸福度を高めてくれる反面、ネガティブな感情が生じることもある推し活。金銭面など注意すべき点も理解しながら推し活を楽しんでほしい。
(吉田桜音)
コメント