2026年7月号 並木道

この記事は約2分で読めます。

“This is the HIKARI Super Express bound for Tokyo. “この言葉に聞き覚えがある人は、どのくらいいるだろうか。これは東海道新幹線ひかり号東京行きの車内アナウンスである。車内アナウンスや発着音には不思議な力がある。その音を聞くと、旅行など楽しい記憶を思い浮かべる人もいれば、通学や通勤といった日常を感じる人もいるだろう。本学の学生は多くが関東圏出身であるため、前者の人が多いかもしれない。しかし、私は後者である。現在、授業がある日は東海道新幹線を利用し、地元から吉祥寺まで通学しているのだ。

私は静岡県出身で、大学入学を機に上京した。初めての1人暮らしは月日が経っても慣れることがなく、次第に地元へ戻りたいという気持ちが強くなった。また、将来は地元で就職をしたいという思いから、大学2年生の夏休みに両親と相談し、3年生からは新幹線通学を始めることを決意した。

4月、前期授業の開始とともに新幹線通学が始まった。片道1時間の新幹線乗車時間をどう有意義に過ごすか、日々考えている。私なりの過ごし方は主に2つある。まず1つ目は読書だ。幼いころから本を読むことが好きで、特にミステリー小説をよく読む。登校前日に家の本棚から読みたい本を1冊ピックアップしておいて、乗車中にゆっくりと読む。読書をしていると時間が経つのが早く、気づけば降車駅に到着していることも少なくない。2つ目は勉強である。新幹線は席に1つずつ折り畳み式の簡易的なテーブルが備わっているため、そこでパソコンを開いてレポートを書いたり、テスト勉強をしたりしながら過ごしている。また、コンセントが足元についていて充電もできるため、特に学生や働いている人たちにとっては利便性の高い環境となっている。

もちろん、新幹線を使った片道約2時間半の通学は、楽ではない。1人暮らしをしていた2年間は自転車通学で、高校時代も通学時間は片道1時間以内だった。それでも私は、暮らしやすい静岡県のことが大好きである。そして、生まれ育った静岡県で働き、地方創生に取り組みたいという思いを軸に、この通学を続けている。

帰りの新幹線では、東京駅を出発してすぐ、車窓からライトアップされた東京タワーを見ることができる。そして静岡県に入ると、新富士駅付近で雄大な富士山が姿を現す。毎日見ている富士山だが、車窓から眺めると普段より一段と美しく見える。1日の中で東京タワーと富士山の両方を見られる生活は、新幹線通学をしている者の特権だ。

“We will soon make a brief stop at Shizuoka.”車内アナウンスが流れた。座席のリクライニングを直し、降りる準備を進めていく。東京タワーを見送って約1時間。窓の外には、いつもの静岡の景色が広がっている。  

(長谷川真由)

コメント

タイトルとURLをコピーしました