馬は人類史において、移動や交流の発展に大きく貢献し、人が歴史を築くうえで欠かせない存在だった。日本獣医生命科学大学で馬術部のコーチを務める松本真実さんは、「馬の登場によって世界史は変化を遂げた」と話す。

馬と人の関係は非常に古く、約5500年前にはすでに馬が利用されていたと考えられている。馬の活用によって長距離移動や大量輸送が可能となり、交易が拡大した。その結果、物流が発達し、やがて経済が形成されていった。こうした発展の中で、小さな町から都市へ、さらに国へと成長していった過程を大きく支えたのは馬である。
戦争においても、馬は第一次世界大戦までは騎馬として戦場の最前線に立ち、兵士と共に戦っていた。しかし、大戦後に機械化が進んだことで、彼らは戦場における花形を退き、その後は物資輸送などの後方支援に従事した。
昨今では、馬は農耕や林業の一部を担う場合もあるが、競馬や観光馬車、セラピーといった娯楽的な場面でも活躍している。また、犬や猫のように、人と共に生活する伴侶動物として位置づけられることもある。現在まで生き残ってきた馬は社会性が高く、人間や他の動物にも寛容であることが、人と共存し続けられている理由だという。
時代と共に馬の役割は変化してきたが、松本さんは「個々の馬と人の関係は変わっていない」と話す。今も昔も馬に対する思い自体は変わらず、その時代に応じた最善の形で向き合ってきた。現代では、自ら選択して馬と関わる人が多くなったことで、馬の立場や福祉に目を向ける人も増えている。
そうした流れの中で重視されているのが、動物が苦痛なく生きられる環境を目指す、アニマルウェルフェアという考え方だ。人と関わりながら生きる馬の生活の質を保障し、孤独や不安を感じさせない環境づくりが重要である。松本さんは「馬と人が互いに信頼関係を築き、馬には最後まで幸せでいてほしい」と語った。馬と人のより良い未来は、私たちの意識と行動にかかっている。
(橋本こと乃)



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