東洋大学が主催する「現代学生百人一首」が今年で39回目を迎えた。このコンクールでは、学生のものの見方や生活感覚を詠みこんだ短歌を募集している。例年、全国の学生から寄せられる約6万首のうち、入選作100首を「現代学生百人一首」として発表している。百人一首を現代によみがえらせた同コンクールは、短歌の新たなあり方を示す取り組みとなっている。
このコンクールは1987年、大学創立100周年を記念した「百」にちなむ行事として始まった。当初は学生の「感じる・考える・伝える」力の養成を目的とした活動の一環であったが、現在は大学の個性や特色を打ち出す取り組みの一つとして継続されている。
今回は、同コンクールで選考委員長を務める、東洋大学文学部の高柳祐子准教授に話を伺った。

高柳准教授は選考について「100首を一つの作品として、全体のバランスを意識している」と話す。選考作品はテーマの偏りを避け、多様な地域・学校での、学生のさまざまな日常を反映している。コロナ禍には約7万8千首と過去最多の応募数を記録し、内省的な作品が多く寄せられた。収束後はイベント関連の軽やかな短歌が増加し、従来の学生生活の復活が感じられた。
近年はSNS上の短歌投稿も盛んだが、高柳准教授は「百人一首として100首が集まることで、見知らぬ人たちとの間に生まれる調和がある」と同コンクールの魅力を語った。個人での発表が容易になった現代においても、一つの作品としてまとめることにより、また違った輝きを放つ歌があるという。
短歌創作は教育的な効果ももたらしている。学校現場の教員からは、自分の考えを三十一文字にまとめることで、生徒自身に推敲する習慣がつき、文章力が向上したという声が寄せられた。大学の中には、一般教養科目として短歌創作を取り入れているところもある。
昨年度にはそうした大学の一つ、東京理科大学の学生の素数を題材とした作品が同コンクールに入選した。文学や文系といった印象の強い短歌だが、題材は各学生の身近にあるようだ。しかしながら、現代学生百人一首の応募総数に占める大学生の作品の割合は、中高生に比べ依然として低い。大学生ならではの視点が加わることで作品の層が豊かになるため、今後は大学生のさらなる応募数増加が望まれている。
最後に高柳准教授は、短歌になじみのない学生に向けて「気負わずに日常をそのまま言葉にしてほしい。平凡な出来事であっても、三十一文字に収めると輝く歌が生まれる」と呼びかけた。
「現代学生百人一首」には変わらない青春の一幕と移りゆく時代の情景が刻まれている。約40年の歴史を重ねたこのコンクールは、学生たちの記録として史料的価値を帯び、輝きを増している。
(矢島愛実)


コメント